お知らせ

私たちが精神科病院に入院中の方へ会いに行く理由

2020.05.06 UP

精神科病院に入院中の方から、面会にきてほしいという要望に応えて35年を迎える市民団体が大阪にあります。人権侵害が蔓延する療養環境は、諸外国と比べて50年遅れとも言われる日本。精神科病院の権利擁護のとりくみは今、全国へ広がろうとしています。

日本の精神科病院で起きていること

大阪精神医療人権センターはなにをする団体というかというと、精神障害者の人権が守られるための活動を続けている団体です。安心して、かかれる精神医療を目指しています。たとえば、日本の精神医療は次のような問題を抱えています。

■入院者数は世界的にみてもきわめて多く半数近くが強制入院(医療保護入院や措置入院)です。

■身体拘束は10年で2倍近く増えています。

■全体の半数以上が1年以上の長期入院です。

これらの問題の理由は、法律で定められた強制入院や行動制限の要件が曖昧で、現場では緩やかに解釈されていること。医療保護入院や身体拘束・隔離は、たった1名の精神保健指定医が判断していること。精神医療審査会によるチェックがほとんど機能していないために解決されずに経過しています。

精神医療審査会で、入院届や定期病状報告で入院継続不要と判断された割合はほぼ0%です

日本の精神医療の現状は、精神障害者の人権が制限されています。当たり前に地域で生活し、必要な時に安心してかかれる医療が整備されていません。精神科病院では密室性、閉鎖性が解消されておらず、虐待や事件が起こりやすい環境です。基本的人権が保障されていない状態にもかかわらず、入院中の方への権利擁護システムが十分ではありません。また精神障害、精神疾患に対する差別意識、偏見は病院の中に外にもあります。
このため、人権センターでは3つ合言葉を掲げ、次のような取り込みを通して精神科病院に入院する方々の立場に立った権利擁護活動を実践します。

声をきく

入院中の方のための手紙、電話、および面会による相談を行います。
例えば、電話相談を担当しているのは当事者、精神保健福祉士、看護師、家族…などです。
また、面会活動には、それ以外にも、医師、ヘルパー、弁護士、会社員、行政職員、建築士、学生、一般市民と立場を超えてボランティアが活躍しています。
これらのボランティア活動に参加するためには、ボランティア養成講座を受講し、登録する必要があります。

扉をひらく

精神科病院へ訪問・視察し、病院と意見交換をし療養環境を改善していきます。レポートをまとめwebで公開し、大阪府下の精神科病院を一巡すると印刷物として発行、販売しています。
この制度には9つの団体が参加していますが、それぞれの団体が精神障害者の人権を保障するという役割を担っていますけれど、名前に「人権」を掲げているのは私たちだけです。

 

療養環境サポーター制度の紹介

 

社会をかえる

安心してかかれる精神医療を実現するために精神医療および、精神保健福祉に関する啓発や政策提言をしています。
病院訪問活動と退院促進事業の制度化を提言した結果、訪問活動精神が精神医療オンブズマン制度として2003年に大阪府で制度化されました。
退院促進事業は2000年に大阪府で制度化され、2006年に障害者自立支援法で全国レベルの制度となりました。(現在の制度名称は、「精神障害者地域移行・地域定着支援事業」)

政策提言等 (社会をかえる)

精神科病院に入院中の方から寄せられるニーズ

電話相談などに寄せられた要請により、精神科病院へボランティア2名を派遣して面会に伺います。電話相談の内容は「面会に来てほしい」が最多です。面会相談の内容は「退院したい」が最も多く、様々な相談内容が続きますが、必ずしも明確に希望が語られるわけではなく、他愛のない日常会話や近況報告の中に本当の望みが隠れていることもあります。私たちは会話により信頼関係を築きながら、抱えている悩みや望みを共有していきます。そのため初回での解決を目指す訳ではなく、継続して訪問しながら入院中の方の希望を手助けして行くのが役目です。

また、私たちは病院職員の業務を代行するものではありません。退院調整などをすることはありませんので出来る役割と出来ない役割があります、例えば、病院職員に変わって退院先や家族の調整、退院の可否を判断することなどは行いません。もちろん、本人の承諾なしに医師やスタッフ、病院に報告もいたしません。電話・面会相談における私たちの主な役割は「権利があるということを知らせること」と「権利を使いこなす支援」です。

権利擁護活動の具体的内容

私たちの行う権利擁護活動は、次のようにまとめることができます。

【1】権利(があるということ)を知る支援<アウトリーチ>
【2】今ある権利を使いこなすことの支援
【3】権利の状況・分析<リサーチ>
【4】権利侵害に対する救済・回復支援
【5】権利を使いこなした結果としての制度改革・新しい制度提案<ロビー活動>
【6】次世代に人権理念を受け継ぎ発展させる人材の育成

基本的人権とはなんでしょうか

人が自分の生き方を選択し、自分らしく生きていくため(個人の尊厳)には、『人権』が守られなければなりません。それは、なにか難しいことではなく、自分が生活したいところで生活し、好きなところで食べ、好きなところで寝て、行きたいところへ行き、知りたい情報を知り、自分のプライバシーが守られるといった、「ごくフツー」のことです。これらは、日本国憲法第13条に書いてあります。「すべて国民は、個人として尊重される」日本国憲法は、「個人の尊厳」を確保することを最も重要な価値観としています。
「個人の尊厳」とは、個人が他人や社会から制約を受けずに、自らの生き方を選択して、実践することを大切にするということです。

人権の特徴は、人間であることにより当然に有するとされる権利であり(固有性)、人権が原則として、公権力によって侵害されないこと(不可侵性)。人種、性、身分、障害の区別に関係なく、人間であることに基づいて当然に共有できる権利です。(普遍性)

しかし、精神科病院の中では、この「基本的人権」が保障されていません。
私たちは、入院中の方へ「誰もがもつ権利」をお知らせするためにリーフレットを配布しています。

│おこまりごとを教えてください│精神科に入院中の方へリーフレットを差し上げます。

精神科病院に入院するということ

精神科病院への入院は大きく3つに分けられます。ひとつは「任意入院」、これは本人の同意に基づくものです。医療保護入院と措置入院は「非自発的入院」つまり強制入院です。しかし任意入院だからといって、問題がない訳ではありません。
そもそも、精神保健福祉法では「本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない」とされていますが、入院者の約46%が強制入院です。
任意入院でも、閉鎖処遇が多く、また、入院が必要ではないのに、長期入院等が事実上強いられているケースが多くあります。
つまり任意入院であったとしても、権利擁護活動の必要性があります。任意入院だから本人の同意があり、問題ないという認識は誤りです。

医療保護入院の問題点

医療及び保護の必要性という要件は厚生省告示を含めて、何ら規定されていません。全く不明確なルールで自由を奪うことができる制度です。また医療保護入院には期間制限がなく、退院要件も規定されていないのです。
さらに、医療保護入院は、国家VS私人ではなく、私人VS私人に対して強制力を行使する構造となっています。たった1名の精神保健指定医の診察で本人の意思に反した入院が可能なのです。
家族等の同意を求めることにより、家族等に過重な負担を負わせ、本人との信頼関係を崩壊させてしまう可能性があります。

私たちの活動に賛同とご支援を

ここに挙げた精神医療の問題点は、実はごく一部にすぎません。この記事をご覧いただいた方の中には、自らも辛い思いをされた経験のある方、あるいは現在進行形で入院されている方、家族として向き合われている皆様、また、医療福祉従事者としてジレンマを抱えながら業務にあたっていらっしゃる方などが多くいらっしゃるかと思います。精神医療の実態を知り、初めて問題意識を持たれたも、大阪精神医療人権センターといっしょに考えてみませんか?

「できない100の理由より、できるひとつの方法を」

大阪精神医療人権センターに参加するには、ボランティアだけでなく、寄付者として支える、会員として機関誌を購読する、講演会・シンポジウムに参加するなど様々な方法があります。まずは、各メディアのフォローをお待ちします。

当センターの活動を維持し、充実させるためにご支援をお願いします。

現在、当センターの活動には、当事者、家族、看護師、PSW、OT、医師、弁護士、教員、 学識経験者、マスコミ関係者等の様々な立場の方が、世代を超えて参加しています。当センターは精神科病院に入院中の方々への個別相談や精神科病院への訪問活動、精神医療及び精神保健福祉分野への政策提言活動等を行っています。

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