訪問活動の歴史的背景及び変遷

1998(平成10)年 ぶらり訪問のスタート

大和川病院事件のような不幸な事件を二度と起こさないためには、府下の精神科病床を持つ全ての病院を訪問し、患者の声を聞き、市民の目によって病棟を点検する訪問活動が必要でした。1998(平成10)年7月、大阪精神病院協会(現在は大阪精神科病院協会)の役員会の場で「これまで精神病院で起こってきた人権侵害事件の背景に横たわっていた閉鎖性をなくし、患者が安心してかかれる医療に一歩でも近づけるため、病院訪問をおこなって、その情報を公開していきたい」と説明し、協力要請をしました。その場に出席していた病院長の方々も、大和川病院事件の繰り返しを防ぐには精神科病院の風通しをよくし、市民の視線を浴び、利用者の声に耳を傾ける時代が来ているとの意見でした。 
こうして病院訪問活動がスタートしました。人権センターでは、設立当初から入院患者の依頼による面会活動に取り組んできましたが、病院全体を訪問したのはこのときが初めてでした。

2000(平成12)年 「扉よひらけ」の発行

そして2000(平成12)年には、全病院の訪問結果や病院へのアンケート結果、情報公開で得られたデータ等をまとめた冊子「扉よひらけ」を発行しました。
冊子は病院で、実際に目にし耳にしたことをもとにありのままを伝えようとまとめたものです。できるだけ主観的な見方は排除するように努めましたが、あるいは病院の立場からは異なる見方があったかと思います。また、病院は日々変化しつつあり、訪問日を明記しました。

精神医療オンブズマン制度ができるまで

人権センターの代表および事務局長は、1998(平成10)年3月から大阪府精神保健福祉審議会に参加し、「大阪府障害保健福祉圏域における精神障害者の生活支援施策の方向とシステムづくりについて」(1999年3月答申)の取りまとめに尽力するとともに、それに引き続いて、精神科病院内における人権尊重を基本とした医療・処遇のあり方および権利擁護システムの検討が不可欠であることを同審議会に提起しました。そして1999(平成11)年から2000(平成12)年までの議論を経て、同審議会において同年5月に知事に対する意見具申「精神病院内における人権尊重を基本とした適正な医療と処遇の向上について」が採択されました。
この意見具申を具体化するための作業が、人権センターも参加した大阪府精神障害者権利擁護連絡協議会において2年をかけて行われ、2002(平成14)年に「精神病院における入院患者の権利擁護システムの構築について」と題する提言としてまとめられました。
この提言に基づいて、連絡協議会は精神医療オンブズマン制度を設置し、その活動を保障することになりました。精神医療オンブズマン制度の実施にあたり、これまで「ぶらり訪問活動」を行なってきたNPO大阪精神医療人権センターが大阪府から事業委託を受け、オンブズマン活動を担うことになりました。

2003(平成15)年 精神医療オンブズマン制度のスタート

2003(平成15)年4月からスタートした「精神医療オンブズマン制度」では、2003(平成15)年から2008(平成20)年7月にかけてのべ84病院に訪問しました。1病院あたりの病院滞在時間はおよそ3時間程度、訪問者数は1病院あたり4~8人です。
訪問活動では、「入院中の精神障害者の権利に関する宣言」が守られているかということについて、利用者への情報提供の実情、隔離室の療養環境、病棟の療養環境、入院者からの聞き取り等の視点で活動をしてきました。
この活動により、病院の療養環境が改善され、病院側に伝えた意見・要望等も真摯に受けとめられるなど、種々の前進が見られました。このような病院のハード面、ソフト面の改善等は、それ自体が目的ではなく、良好な療養環境と適切な治療・看護等を確保することを通じて、患者ができる限り短期間の入院を経て退院し、地域社会での生活ができるようにすることを目的としています。

2008(平成20)年 精神医療オンブズマン制度の予算打ち切り

精神医療オンブズマンの病院訪問は、2007(平成19)年8月には大阪府下の病院をほぼ一巡し、新しい視点、目標等を加えて二巡目に入りはじめていました。
その矢先である2008(平成20)年4月、大阪府橋下知事は、財政再建を口実として、2008(平成20)年8月1日以降の精神医療オンブズマン制度の予算(事業全体で約290万円、そのうち当センターへの委託費約145万円)を全てカットするという案を発表しました。その案が示されて以降、ただちに大阪府内、全国の多くの方々から本事業を継続すべきであるとの声が寄せられました。1ヶ月ほどで集約した本制度の存続を求める署名には約2万人の方が署名をしてくださいました。
こうした多数の要望を背景にして、府議会全会派が紹介議員となった「精神障がい者の権利擁護システムの存続を求める請願」が2008(平成20)年7月23日 府議会本会議で 全会派一致で採択されました。しかし、知事はこの制度を廃止に追い込みました。

2009(平成21)年 療養環境サポーター制度のスタート

たくさんの方の支援を得つつ関係者等と協議した結果、2009(平成21)年4月から「療養環境サポーター制度」が新たにスタートしました。
の制度は、当センターがサポーターを集約し、訪問先病院を選定し、日程調整のうえ病院を訪問して報告書を作成し、それを検討協議会で検討するというもので、活動の内容は精神医療オンブズマン制度と同じです。以前と大きく異なるのは、このような作業を中心的に担っている当センターには大阪府から1円の費用も支払われないという点です。
しかし、当センターは、大阪府、大阪精神科病院協会、当センターなどの関係諸機関・学識経験者によって構成される検討協議会の枠組みの重要性を認識して、この活動を無償で引き受けています。活動を継続するためには府が再度予算化することを関係方面に強く働きかけていかねばなりません。精神障害者の権利擁護システムを充実させ、これを全国に拡げることが国や大阪府に求められます。当センターは、さらに活動の質を高め、活動の範囲を少しでも広げていく決意です。

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現在、当センターの活動には、当事者、家族、看護師、PSW、OT、医師、弁護士、教員、 学識経験者、マスコミ関係者等の様々な立場の方が、世代を超えて参加しています。当センターは精神科病院に入院中の方々への個別相談や精神科病院への訪問活動、精神医療及び精神保健福祉分野への政策提言活動等を行っています。

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