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妹から教えてもらった世界│精神科アドボケイトってどんな人?

2022.07.01 UP

妹から教えてもらった世界
ペンネーム アレキ 精神科アドボケイト(面会参加者)

妹のこと

私にとって妹は、かわいい存在でもありましたが、小さなころから「いうことをきかない」「わがままな子」という印象があり、姉としても困ることが多かったと思います。おそらく両親も困っていたと思います。特に妹が中学生の頃、姉の私に中学の先生方が「あれは、あかんぞ」などと何度も言われ、傷ついたことを覚えています。きっと妹はもっと否定され続けたのではないかと思います。でも昔はそんな時代でもあったのかもしれません。精神疾患や障害について学んだ今だからこそ思えるのかもしれませんが、妹は他の人と違う発達の仕方をしていたのだと思います。
その時の私はひどいことを言ったこともあったと思います。最近では妹と笑って思い出話もできるようになり、妹は「どうして私のことを分かってくれないの」「なんか人と違うな」という気持ちだったことを話してくれました。私は今でも、知らなくて、わからなくてごめんね、という気持ちで胸がいっぱいです。だからこそ、精神障害や疾病特性、誰にでもある発達特性についてより多くの人に知ってもらうことは、あらゆる人々にとってとても安心できる助けになるのではないかと思うのです。

妹がいてくれたから

私は看護師でありますが、妹が精神疾患にかからなかったら、精神医療や精神科看護にあまり問題意識を持たないまま通り過ぎていたと思います。きっと自分の中の偏見と向き合うこともなかったでしょう。だから今では妹に対して「あなたのおかげで精神医療や精神科看護のことを考えるようになったし、さらに知りたいと思うようになった。だから、その世界を私に教えて欲しい、より多くの人に知ってもらいたいから」と伝えています。

肩身がせまかった

妹に精神疾患があると診断されてから、家族全員の人権が脅かされているような気がしていました。今思うと私は精神障害に偏見があったのだと思います。私は看護師ではありますが、精神障害のある妹の理解ができず、何でそんなわけのわからないことを言うのだろうという気持ちがありました。また、看護師であるのに、妹を理解できないこの私の得体のしれない不安な気持ちをわかってくれて、アドバイスをしてくれるような信用できる人が思いつかず、誰にも相談ができませんでした。でも「何とかしないと」という責任感なのか変な焦りみたいなものはありました。悩んでいるのに誰にも相談ができないということは、妹を否定している、隠しているようにも思え、それも嫌で、余計に肩身が狭いと思い込み、自分を追い込んでいたのかもしれません。

家族会との出会い

そんな時に偶然、地域の新聞で精神科医への相談ができる案内をみつけ、藁をもつかむ思いで保健センターに相談しました。保健師さんは、私の気持ちは「決しておかしいことではない」と、妹や両親のことも批判せずに「しんどかったねー」と聴いてくれました。私は、話しながら涙が止まりませんでした。それから地域の統合失調症の家族の会への参加を促され、参加することになったのです。この時初めて、正直に自分の思いを相談でき、私のことも家族のことも批判せず聴いてもらえるという安心できる体験をしました。
家族会で大家連の情報が紹介され、もっと同じような思いを持っている人がいる会に参加したいと思い、参加しました。大家連の講座では、多岐にわたる新たな知識が得られることで、妹の理解が促進され、それが安心感にもつながり毎月参加するようになりました。

人権センターとの出会い

毎月、大家連の講座に参加して1年くらい経過した頃だったと思います。大家連の講座で人権センターに出会いました。
この頃には職場復帰をしており、偶然にも精神科ではたらくことになっていました。精神科での経験は、妹の疾病特性について理解が促進されるのではないかという期待もあったのですが、私のいる医療の現場では、残念ながらそのようなことはあまり感じられませんでした。これは家族であるからこそ感じてしまうことかもしれませんが、精神科での入院生活は、その人の暮らしから程遠いように感じたからです。あまりにも制限が多すぎる、その制限は個別には検討されず、一般化されてしまう、それを「仕方ない」「精神科ではそのようにしています」というようなことが多く、衝撃を受けてしまいました。安全を守ることは重要ですが、一方でその人の思いや権利をどのように尊重していくのかということは、あまり議論にならない文化があるように感じたのです。
医療者は人権についての教育や疾病理解のためにも自己の思いについて見つめ、振り返ることが重要ではないかと思うのですが、精神科での経験のない私の意見は何の説得力もなく、また方法もわかりませんでした。妹が入院することになっても安心できない、、、漠然とそんな不安がありました。

そんな中での大阪精神医療人権センターとの出会いでした。保健センターに続き、第2の藁をもつかむ思いでした。その時に配られたチラシやニュースを読んで、「ここにも味方になってくれるところがある」「相談しても否定されないところがある」「医療現場のことも話せる」「いろいろな立場の方がいる」と知りました。あーよかった、家族としても、看護師としても、他の立場でも考えてくれる人がここにはいたー!と思ったわけです。すぐに会員になり、この時初めて、自分身分が看護師であること、家族であることを話すことができました。
その後、私の立場だからこそできることもあるのではないかと思い、面会活動に参加するための講座に申込み、面会に行かせていただいています。研究会や講演会にも可能な限り参加しておりますが、どちらの立場もわかるが故の何とも言えない苦しさもあることは否めません。
これからもセンターの活動には、私ができる範囲で参加したいと思っています。センターの活動や取り組みは、人として支え合うことを感じられて、私にはとても癒しになるのです。

人権センターの活動に参加して

私は看護師という立場、患者の家族という立場があります。そして人権センターでの立場もあり、地域では母親という立場でもあります。
その中で、思うことは、理論や“べき論”も重要であるのですが、現場で起こっていることにはどのような背景があるのかについて、現場の人も考える、家族としても考える、人権センターから面会に行く立場としても考える、そして社会全体に知ってもらって地域の住民としても考える人が増えてほしい、もっと多くの人に参加してもらえないかなと思うことがあります。
面会ボランティアとしては、入院している当事者の思いを聴いて、当事者中心となるように病院スタッフと協働できないだろうかと考えることが多いです。考えるだけで何もできないかもしれないですけど、病院スタッフ以外の外部からの眼があることも大事なことであると思いますし、それが、精神医療の文化を変えていくことにも、必ずつながるだろうと思いながら参加しています。

※本インタビューはSOMPO福祉財団のNPO基盤強化助成で実施しました

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