お知らせ

精神科に入院中の方からの電話相談│ボランティアさんに聞きました

2023.01.22 UP

教えてくださいの会できききれなかったことをインタビューしました!

聞き手:小暮主歩・森本康平

普段から様々な問題について情報発信をされている有我さんですが、今特に注目している問題はありますか?


障害者権利条約や精神保健福祉法改正の問題は今一番大きいです。精神科でのコロナ被害についても自分で情報を集めて分析して発信しています。イタリアの精神保健ともずっと関わっています。イタリアは地域精神保健を実現して病院を縮小してきたけど、いま逆に、病院を守りたい人たちが精神科医療を民間の病院中心にして、公共的な医療制度を解体しようとしているんですね。地域精神保健の象徴でもあるマルコ·カバーロ(イタリアの精神医療改革運動の象徴として1973年にトリエステの精神病棟で作られた高さ4mの青い馬の像)が壊されようとしていて、それに対抗する動きにも興味を持っています。政治的な動きだけではなくて、当事者の人たち中心の組織活動を、どんなふうに支援できるかが自分のなかの大きなテーマです。
それは、精神保健に携わったときから当事者中心の活動に関与してきたからですか?
“Da vicino nessuno e’ normale”っていうイタリアの言葉があって、「近づいてみたら誰一人まともな人はいない」っていうスローガンなんだけど、僕もそういう感じ方があります。誰しもがいつ精神疾患になるかわからないし、自分もそうだと思っています。若い時って、誰しもちょっとおかしいところがあるじゃないですか(笑)僕自身、精神科に看護助手として就職した当時、自分の中の危機みたいなのを感じていたんですよね。精神疾患のある人たちをケアするうちに、自分の内面の危機的なものが表面化してしまわないか心配していました。タクシーの隣に乗っている同僚が自分の気持ちを読んでいるんじゃないかと心配になったり、サングラスをかけて電車乗ったりしていました。
患者さんのカルテを見たら、みんないろんな挫折を経験していた。学校でひどいいじめにあったり、家庭で虐待を受けたり、職場で仕事がうまくいかなくなってうつになったとか。民族的な差別にさらされるなかで統合失調症を発症したんだなってはっきり思えるような人もいたんです。そういう人の話を一生懸命聞いていると、他人事とは思えなかった。
僕がいたのは少し変わった病院で、開放病棟の患者さんが病棟の中で売店と喫茶を運営して収益金を患者自治会の自治会費にあてていました。自治会では病院と向精神薬のことで討論会をしたり、厚生労働省に要望を出したりしていたんです。僕はその自治会担当だったんですよ。人権センターができるときには送迎バスで20人弱の自治会の人たちと一緒に設立集会に乗り込みました。僕のいた病院のいろんなスタッフが当時人権センターにかかわっていて、電話相談の最初のころは、私と同僚とほかの病院のスタッフが交代で相談を受けていました。

そのころからずっと電話相談してるんですか。37年間も!?

そうそう。人権センターができた頃、僕は閉鎖病棟に異動になって、外出を制限したり隔離や身体拘束をしたりしないといけなくて、嫌がっている人たちにそれをするのが苦痛でそばに話を聞きに行っていました。だから人権センターで活動して状況を変えていこうと決心したんです。そうしたら異動後2ヶ月間続いていた神経性下痢が消えました。したくないこともせざるを得ない看護の仕事をしながらも問題提起をして、同僚や病院、社会に働きかけて変えていきたいというのが、当時からの自分の原動力なんですよ。
今はコロナでできないけど、就職したころから患者さんたちとバンドをずっと続けています。病院の受け身の生活からマイクを持てば主人公になるようにと。ずっとやっていたら、最初は病院に通院するのもしんどかった人が、バンドに入ってギターやドラムやサックスまでするようになって、今はマルチプレイヤーとして活躍している人もいます。だから精神疾患のある人自身が主体で、その人が歌いたい曲があったらそれに対応して演奏する、リカバリーを支援したいというのがずっとありますね。その人たちが少しでも楽しめるようにどのように変えていけるか。バンドも最初から一緒にやってきて、患者かスタッフかで切り離せるものではないと思っています。

よくデータを集めて情報発信しておられますが、それは何かきっかけはあるんですか。

昨年亡くなられた伊藤哲寛さんという自治体病院の精神科医の方が、日本の精神医療の問題を、データを活用して発信されていて全体的にどう捉えるか学んで大いに影響を受けました。また、大熊由紀子さんが、日本の精神科病床と入院期間が世界とどれだけ違うのかグラフで発信していてその説得力に衝撃を受けました。それをモデルにして、自分でもOECDやWHOや630調査などのデータからグラフやプレゼン資料の作成などをしてきました。

最後に、人権センターに今後どんな風になってほしいと思いますか。

人権センターが今の精神保健の中で果たす役割はとても大きいと思っています。全国的に権利擁護活動を広めていくネットワークづくりをしていく重要なポジションにありますよね。あとは、(厚生労働省が2024年度から始めようとしている)訪問支援事業に対応していくことも大変なことです。アドボケイトの核となるのは、退院したい、不当な処遇をなんとかしてほしいと強く求めている人に対して、どういうアプローチでどう支援できるかですよね。30数年の長期入院から退院請求して単身生活を実現した人の支援もしてきました。切実な課題にちゃんと対応して、その人の生活を取り戻すということにつながる活動をしていくことが大切だと思います。
最近人権センターに関わるようになった若い世代の人たちのセンスがよくて、非常に素晴らしい力を持った人たちが集まっています。そういう人たちが力をより発揮できるように、アドボケイトの核となるポイントを次世代にきちんと伝えていくことが大事だと思っています。

インタビューの感想

お仕事や人権センターでの活動の傍ら、普段からSNSなどでも様々な情報発信をされている有我さん。精神科に就職した当時からの、自助グループやバンドを通した患者さんたちの密なつながり、それに、イタリアや日本の各地で活動している多くの人たちとのネットワークがモチベーションになっているのだろうなと感じました。話が多岐にわたってどうまとめるか悩ましいインタビューでしたが、興味深い話をたくさん聞かせていただきました。紙面の都合上載せられなかった話もたくさんあるので、皆さんも機会があればぜひ、有我さんに気になることを聞いてみてください。

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