お知らせ

「入院者訪問支援事業」制度化される個別面会活動│設立37周年ごあいさつ

2023.01.10 UP

皆さまにはいつも大阪精神医療人権センターの活動をご支援いただき、誠にありがとうございます。
人権センターが発足したのは1985年11月です。その前年に、いわゆる宇都宮病院事件が発覚しました。入院中の患者さんが病院でリンチを受けて亡くなるという事件です。それをきっかけに、日本の精神医療が国際的な批判にさらされました。当時の精神衛生法は精神保健法に改正され、そのときに本日の講演会のテーマにとりあげた「精神医療審査会」が制度として設けられ、任意入院制度なども新設されました。

精神保健法はさらに精神保健福祉法となり、同法もたびたび改正されました。その間、人権センターは大和川病院事件にかかわり、法改正にも寄与してきました。しかしながら、収容主義的な精神医療はほとんど変わってきませんでした。人権センターができた37年前も日本の精神病床は30万を超えていて30万人以上が入院していましたが、今もベッド数はあまり減っていませんし、入院者数は30万人に近い状況です。
精神保健福祉法の改正だけでは何も変わらないということだろうと思います。

いま、精神保健福祉法の改正案が国会で審議されています。改正点の一つに医療保護入院の見直しがあります。医療保護入院は、家族がいれば家族の同意が必要で、これまでは家族の同意がなければ入院させることができませんでした。ところが改正案では、その場合でも市町村長同意があれば入院させられることになります。つまり医療保護入院を拡大する方向に改正しようというのです。日本弁護士会連合会が描く強制入院廃止のロードマップに逆行するような内容になっています。

人権センターが取り組んでいる活動として、入院中の患者さんから相談をうけて面会に行く個別面会活動と、精神科病院を訪問して入院者から話を聞いたり病棟内の設備を見たりして、病院の療養環境の改善を要請していく病院訪問活動があります。わたしたちは微力ながら、こうした活動が精神科病院における人権侵害を防止するとともに日本の精神医療を変えていくことにつながると考えています。
今回の精神保健福祉法の改正案では、わたしたちの実践している個別面会活動が「入院者訪問支援事業」として制度化されようとしています。この部分の改正は、正しい方向での改正であり、よりよい制度にしていく必要があります。人権センターが一番にかかげている目的は、安心してかかれる精神医療を実現することです。そのために今後も活動を続けていきたいと思います。引き続きご支援とご協力をたまわりますようよろしくお願い申し上げます。

共同代表 位田 浩
(11月12日記念講演会ごあいさつより)

関連資料1 精神保健福祉法改正に関する資料

2022年12月10日改正法は成立しました

医療保護入院の見直し
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案(令和4年10月26日提出) 概要」P8 厚生労働省ホームページ「第210回国会(令和4年臨時会)提出法律案」より

関連資料2 精神保健福祉法改正に関する資料

2022年12月10日改正法は成立しました。

入院者訪問支援事業
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案(令和4年10月26日提出) 概要」P9
厚生労働省ホームページ「第210回国会(令和4年臨時会)提出法律案」より

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