療養環境サポーター活動に参加して
NPO法人ロータス 理事長
療養環境サポーター 弘 瑛美子
私は、10年以上前からになると思いますが、精神科病院の訪問活動に参加させて頂いています。現場の仕事もありますので、年に数回しか参加できず、本当に微力ですが、細く、長く、この活動に参加させて頂きたいと思っています。 他の診療科と違い、日本の精神科には、とても長期に渡り入院されている方が(40年以上も)たくさんおられることが、大きな人権問題として課題となっています。ご本人は、症状も安定され、充分退院できる状態であるにも関わらず、長期になったが為に、家族構成が変わり、受け入れが難しい、社会資源としての支援施設が少なすぎる事。また、まだまだ障がい、病気に対する偏見が根強い事。入院が長期化してしまい、その環境に順応するしか方法がなく、“退院したい”という意欲が奪われていった経過も、大きな要因と思われます。
精神科病院に訪問させて頂き、入院中の方や、看護師さん、スタッフの方々に、聞き取りをさせて頂きます。確かにまだまだ、入院中の方を一人の人として尊重する認識がうすく、「乱暴な言葉で命令される」「逆らうと保護室に入れられる」「体を拘束される」「主治医に退院したいと言っても聞いてくれない」「退院したくても言えない雰囲気で諦めている」そんな言葉を聞くこともあります。
しかし、精神科特例で、医師や看護師を少なく配置する事が、認められている為、一人一人の入院者に掛けられる時間がない事、スタッフに余裕がなく、手厚く話を聞いたり、ゆとりを持って、関われない事も、「いつも看護師さんは、忙しそうだから・・・」と優しい入院中の方達は、与えられた状況を我慢してこられた印象を受ける事が多い。ソーシャルワーカーが、たくさんいる病院でも、病棟の中で、全く見かけない事も、とても不思議に感じます。
40年前とは、制度も、資源も大きく変わり、利用できる福祉サービスも沢山ある。訪問看護や、ヘルパーさんの家事援助や、外出の同行、日中の支援施設、グループホーム・・・まだまだ不足しているものの、医療、地域、福祉、行政がもっと、本人を中心としたネットワークで、退院支援を迅速に行えるようになれたらと願います。
お話しさせて頂いた、多くの入院中の方は、優しく、礼儀正しく、誠実だった。季節の移ろいも解らない、退院の話をする事さえ憚られる、外から鍵を掛けられた病棟での長い長い年月の中で、何を想っておられるのだろうか・・。誰にとっても、一人一人の一日は、大変貴重なものなのだから。
(NPO法人ロータス機関誌「蓮の上の猫」2017年12月号より、一部修正して掲載)