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精神科病院における身体拘束を考える

2021.03.15 UP

記念講演会「精神科病院における身体拘束を考える」
長谷川利夫さん(杏林大学教授・精神科医療の身体拘束を考える会代表)

精神科病院における身体拘束は、精神保健福祉資料によれば2017年では12 ,528人とされ、10年前(2007年)の6,786人と比較して約2倍となり、その数は増え続け、身体拘束によって生命が奪われる事件の報道もなされています。身体拘束は、「生命」・「個人の尊厳」にかかわる問題です。大阪精神医療人権センターでは、身体拘束がそもそも「治療」といえるのか、身体拘束に根拠や合理性があるのかという根本的な疑問点から、精神科病院における身体拘束を考え、現状を変えていくための方策を検討しています。

身体拘束とは

写真1
身体拘束のうち、両手両足と胴を拘束することが五点拘束と呼ばれています
頑張って起き上がれば、起きることは何とかできるかもしれません。最近の日精協雑誌(日本精神科病院協会)には、「身体拘束中に寝返りが打てないということはない」と書かれていましたが、寝返りが打てるか打てないかという問題ではなく、この状態で固定されることは、どう考えてもしんどいですよね。

写真2
写真2は肩と胸にベルトがついていて、肩も全く持ち上がらない。でも、ベルトをしなければ楽とか、そういうことでは決してないです。
車椅子上での拘束で、現場では安全ベルトといわれ、股をくぐらせて固定するものもあります。立とうとしても立てません。

写真3
写真3は実際に精神科病院にあったので着せてもらいました。これは、今では、あまり使われていないと思います。これは後ろに手に回すと、もう手も動かなくなる。ただ、現場の看護の方から、昔は、この長い袖を柱にくくりつけたりしていたこともあったということを聞いたこともあります。

身体拘束の基準


精神障害を理由とする強制入院や行動制限の存在を前提とする精神保健福祉法の存在自体がいいのかという根本的な問題はあります。ただ、今回は、その問題は置いておき、現状について説明すると、身体拘束は、「保護」の名のもとに、「人間」を拘束してしまうわけです。何でもかんでも、「これは保護のため」と言うこともできるということです。
精神保健福祉法第37条1項が規定する基準では、身体拘束は基本的にはしないでください、できるだけ代替方法を探してください、どうしても代替方法がない場合にのみ許されるという規定になっています。
つまり、精神保健福祉法では身体拘束に関する基準は、「やらないでください」「気をつけてください」という解釈をするべきです。この基準は何も変わらないのに、身体拘束はここ10年で約2倍になっています。
図表1

精神保健福祉法37条2項の基準によると身体拘束の対象となるのは、ア)自殺企図または自傷行為が著しく切迫している場合、イ)多動または不穏が顕著である場合、それからア)またはイ)のほか精神障害のために、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがある場合となっています。
この基準では「対象となる患者」としていますが、これに当てはまれば身体拘束をしてもいいというわけではなく、他に代替方法がないことや、一時的であることが必要となります。

図表2
図表2は、隔離と身体拘束を比較した表です。厚生労働省は、隔離や身体拘束はこういうことだと規定していますが、隔離には書いてあり、身体拘束には書いていないこともあります。そうすると、隔離の要件の方が広いことがわかります。
一番左側は私がカテゴライズして書いたものです。「他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等」、「迷惑行為」なんていう言葉があります。「迷惑行為」とは、周りに迷惑のかける行為ということですが、かなり抽象的です。私が今しゃべっていることも、人によって「迷惑行為」かもしれません。病院の職員から見て迷惑と感じられると、「迷惑行為と」なりうるわけです。
学会が作った指針やガイドラインもあります。例えば、日本総合病院精神医学会が「身体拘束・隔離の指針」という本を出していて、器物破損行為とか、物を壊すということも身体拘束が適用されると書かれています。厚生労働省は、少なくとも器物破損行為は、隔離のときは基準にあげているが、身体拘束ではあげていない、けれども、学会が勝手にそういう基準、指針を作って、本として発表しているのです。
とはいえ、厚生労働省が作る基準やガイドラインは、官僚や官僚が選んだ研究班の人によって作られており、とても恐ろしいことです。政治的な力により、「人権」が無視され、入院者にとっては非常に不利な、「そんなことで身体拘束されちゃうの?」みたいな基準ができてしまうことのないよう、最大限、アンテナを張って、監視し、批判していかなければなりません。

身体拘束増加の背景


身体拘束数について、最初に国会で取り上げられたのは、2015年5月に参議院厚生労働委員会で、川田龍平さんが、10年前の1.89倍になったことを指摘しました。厚生労働大臣は、「急性期の入院者が増えていることなどが関係しているのではないか」と答弁しました。急性期の精神疾患の入院者が急に増えるなんてことはあり得ないです。
その後、共同通信等も取材をして記事が出ました。その時に日本精神科病院協会の一部の方が、精神科救急体制が整備されてきたことが要因ではないかと発言しました。精神科救急体制が整備されると、身体拘束が2倍になる、制度ができると、そういう人が増えるということは、とても恐ろしいことです。

隔離と身体拘束に関する調査研究より
~なぜ身体拘束をするのか~


病院の看護師の方に対し、身体拘束の意義やメリットや不利益をどう認識しているのかをアンケート調査すると、「隔離・身体拘束不実施不安度」が、相関していました。つまり、隔離・身体拘束をしないと、看護師が不安になってしまう、だから拘束をしているということです。身体拘束をされる方の理由ではなく、身体拘束をする側の理由で身体拘束が行われているということです。

~期間の長さ~
全国の11病院に身体拘束と隔離の現状の調査をしたところ、隔離の平均日数が46.8日、身体拘束の平均日数が96日でした。海外では数時間、せいぜい数十時間で解除されるところがほとんどです。
公平を期すためにいっておくと、一番下の身体拘束の連続日数の平均は96日なのですが、中央値は19日となりました。中央値というのは、例えば身体拘束された人、689人を期間が短い人から長い人をずらっと並べて、その真ん中の人が19日だったということです。一番長い人は1,096日身体拘束をされ続けていました。飛び抜けて長く身体拘束されている人がいるので、平均値を押し上げているという言い方もできます。でも、身体拘束の平均日数が実際96日というデータが出たということも事実ではあります。

なぜサベジさんは亡くなったのか


2017年5月、ニュージーランド国籍のケリー・サベジさんが神奈川県の精神科病院で身体拘束をされて約1週間で心肺停止になり、転送先の病院で亡くなりました。その後、サベジさんのお母さんとお兄さんが相談に来られ、4月19日に外国特派員協会と厚生労働省で記者会見をしました。海外メディアが先行して報道し、その後、日本のメディアも報道し、身体拘束の問題が注目されるようになりました。2019年5月17日にニュージーランドのラジオが「DEATH BED(死ぬベッド)」ということで非常に丁寧な取材をし、日本の精神医療に対する痛烈な批判を込めて伝えています。
鹿児島県で英語の補助教員の仕事をしていたサベジさんは、精神的に不安定になり、仕事をやめて横浜にあるお兄さんの家にいたのですが、躁状態になりました。2017年4月30日、お兄さんが110番通報して、その後、措置入院になりました。お兄さんの言葉を借りると、「ケリーは暴れずに隔離室で命令に従ってベッドに寝たにもかかわらず身体拘束された」ということでした。「ベッドに横になってください」と言われ、「はい」と言ってベッドに横になる人が身体拘束されるというのが、日本では当たり前に行われている。ニュージーランドの人から見れば、びっくりすることです。でも、普通の人権感覚だったらおかしいと思うはずのことです。結局、サベジさんは2017年5月10日に急変して亡くなりました。
サベジさんのお母さんやお兄さんはカルテを見せてほしいと病院側に言いました。病院側は閲覧ならいいです、コピーは駄目ですとのことでした。日本の場合、これが違法だといえないのです。厚生労働省が作った診療情報の提供に関する指針には、カルテは基本的には本人や遺族のものなので、病院側は開示するようにしなさいと書かれています。でも、厚生労働省の指針ですから、従わなくても罰せられるわけでもない。結局、病院職員がパソコンを操作して、サベジさんご遺族がそれをただ眺める、時間制限30分、延長は30分で合計1時間以内ということでした。その後、提訴予告通知という手続を取ると、ようやく開示するとの連絡が入ってきました。記者会見中のことでした。
診療録によると、サベジさんは、「左手の拘束を外してほしい」と言っていたと書かれていました。看護記録には、「対応は穏やか」、「疎通良好。雑談もでき日本語は完璧じゃないが何とか話せる」と書かれています。母国語が英語の方が日本の精神科病院に入院して日本語で雑談もできるような状態でした。
しかし、サベジさんのカルテは、4月30日16時30分以降、急変した5月10日水曜日まで、必ず毎日8時30分、16時30分、23時30分のほぼ定刻に、「精神運動興奮状態にあり、不穏、多動、爆発性が著しい。放置すれば患者が受傷するおそれが十分にある」、つまりコピペです。雑談ができて疎通良好の人が、精神運動興奮状態で不穏、多動、爆発性が著しいって、全く矛盾している。これは後に争ったときのために、拘束の理由として書かれているのでしょう。
僕はサベジさんのご遺族と一緒に厚生労働省に行って、カルテのコピーを見せ、この矛盾を伝えました。しかし厚生労働省は「神奈川県から精神保健福祉法上の問題はなかったと報告を受けました」と言うのみです。人の命が失われて、日本だけでなく海外のメディアでも報じられ、ニュージーランド大使館から厚生労働省に連絡をしても、ご遺族と一緒に行っても、「神奈川県から精神保健福祉法上の問題がなかったと報告を受けた」で終わりなのです。
国というのは、とても強い権力を持ち、時として、こんな冷酷といえます。だから国との付き合い方は、考えていく必要がある。

拘束率の都道府県格差

図表3
図表3は、都道府県ごとの身体拘束をされている率(入院者100名のうち何名が身体拘束されているか)を分析した結果です。
これで結論的に言えるのは、身体拘束は減らすことができるということです。西日本は身体拘束が少ないです。その理由を考える必要があります。皮肉なことに、日本において精神科救急を最初に始めた千葉県が2番目に多い拘束率でした。

身体拘束をしない病院


日本の中でも身体拘束をしない病院があります。岡山県にある「まきび病院」は身体拘束をしていません。そういう病院は「軽い入院者ばかりだから」とか噂を立てられたりします。私は、実際、見学に行きましたが、全くそのような印象を受けませんでした。症状の重いと言われるような人がいっぱいいます。多分、違う風土だったら、隔離か身体拘束をされていたと思うような方もいますが、この病院には身体拘束をするという発想自体が全然ない。だから、しないでやっていけている。
最近、都立松沢病院が身体拘束を7割減らしたということで注目されています。7割減らしたことは素晴らしいですが、そもそも日本において身体拘束をしていない病院があり、そこで問題は起こっておこらず、そういう病院が評価されていかないといけない。
そういう病院が評価されていく社会は、おそらく精神障害のある方々やその家族の方も含めて、暮らしやすい社会だと思うのです。 

現状を変えるために


ニュージーランドでも、昔は隔離や身体拘束は、治療のためにいいことだと開業医の間では広く信じられていたそうです。世界的に見ても時代の差はあれ、隔離と身体拘束が良いことだと思っている医療従事者がいたということは、特段変わったことではないです。
しかし、いろんな経過を経て、現状、多くの国で身体拘束はほとんど行われていないわけです。隔離とか身体拘束をするというのは治療の失敗なのだと、完全にそういう認識が共有されています。
日本の都道府県別の拘束率に関し、地域差は10倍ぐらいありました。当たり前に拘束をするという慣習がおそらく東日本に多い。身体拘束の慣習がなければ身体拘束はしないという極めてシンプルなことなのです。隔離や身体拘束は治療の失敗だというところまで認識を持っていくようにしないといけない。
日本でも、最近は、リカバリーという考え方がずいぶん言われるようになりました。しかし、本当にリカバリーと言うのなら、身体拘束についても、リカバリーを考えなくてはいけない。身体拘束というのは、「精神保健指定医の専権事項で手をつけられません、他の人には一切言わせません」という構造の中で、医師が看護師に「はい、やってください」と言い、指示に従って看護師の方がやるという体制では、まずいと言わなければなりません。リカバリーを言うなら、まさに身体拘束をされている状況にこそリカバリーが求められる必要があります。
では、ニュージーランドでは、なぜ国としてリカバリーの考えに取り組めたのか聞くと、結局それは「同盟を結成したのだ」と言っていました。精神科ユーザーと市民と医療関係者が、みんなが同盟を結んでやっていくということです。
そう考えると、この大阪精神医療人権センターは、人権が制限されやすい精神科病院の中に市民団体として入っていっている。まさに、様々な立場の方々が集まっている市民団体が、入院している方、精神障害当事者、家族、医療福祉関係者、弁護士、市民、そういう立場を超えて、身体拘束を減らし、なくす動きをつくっていかなくてはならない。
そのことを通じて、結局、今ある精神医療のシステムとか慣習だとかを変えていくということです。身体拘束を減らしていこうという活動をしていれば、自然と精神科病院の中の状況は良くなっていくはずです。是非、今後も一緒に活動を行い、日本の精神医療の課題を解決し、現状を変えていきたいと考えています。

■質問1:病院には拘束具を置かなければならないという規定があるのか?


拘束具を置かなければならないという規定はないです。なぜ、ここまで身体拘束が増えたかというと拘束具があるからです。例えば福島県のある病院では、看護部長が拘束具を全て預かっていて、本当に必要だったら、看護部長のところまで行って理由を説明し、看護部長が認めないと貸し出さないというやり方をとっている病院があります。そこは、非常に拘束が少ない。だから、手近なところに拘束の道具があることは、実は、非常に大きい問題だと思っています。

■質問2:身体拘束をなくすには、どうすればいいのか?


直接的な答えにはならないかと思いますが、「身体拘束をする」という思想や発想があるかないかだと思います。テクニックがあれば減らせる、ないから減らせない、だからテクニックを習得すれば減らせるのだという前提で考えているのであれば、それは違うと思います。
テクニックがあろうがなかろうが、なぜ、人が人を縛るのかということ自体を重大視しているかどうかが大事で、身体拘束は基本的によくないから減らしていこうという方向を明確に共有することが大切だと思います。

■質問3:身体拘束をしないことに対する不安とは?この不安を減らすには?


看護職の方が入院者から暴力を受けるのではないかという不安感だとか、入院者が暴れて器物が破損、例えば壁に何か当てられて破損してしまうとか、そういった特に暴力に対する不安というのが強いのだと思います。

~包括的暴力防止プログラム(CVPPP)について~
包括的暴力防止プログラム(以下「CVPPP」、読み方はCVトリプルP)というプログラムがイギリスで開発され、今、日本の全国の精神病院の中で広がっています。これは自分自身も、悩みながら考えています。CVPPPというのは、ちゃんとした大系があるのですが、護身術的なものも含まれている。当初はそういうものを学ぶことによって、例えば、何かあったときにこうすればいいということを身につければ、不安度も下がるのではないかとも若干思っていた節がありました。
しかし、その後、実際にCVPPPの研修を病院でしている様子を見てみたら、体育館にござを敷いて、看護師の方々が集まって、何かキャッキャ楽しそうにやっていました。「(技が))決まった!」みたいな感じで。人間って、いくらどんなに素晴らしい理論とか理屈があっても、目で見たものから入る印象がかなり強くなる。普段、看護の仕事をしていて、いつもと違うことをして楽しさを感じてしまっても、やむを得ないのかなと思って。でも、この形でずっと進めていっていいのかどうか悩ましいと思いました。
2018年に日本でCVPPPの学会ができ、シンポジストで呼んでいただきました。そのときに会場に各病院のCVPPPのTシャツがいっぱい貼られていました。私たちは、このCVPPPのチームでやりますというメッセージのあるTシャツでした。そして、当事者の方から、「何ですか、あれは?」と言っていました。それって、やっぱり怖いなと思って。CVPPPって暴力への防止のプログラムです。それをやっている医療従事者の方々が、自分たちは、そういうチームだということで独自にTシャツをつくって学会の最初のときに壁に張っているというのは、それは当事者の人からしたら脅威でしかないと思うのです。人間って、やっぱりなかなか、僕も、もちろんそうですけども、気づけない。
では、このプログラムを完全否定するかというと、今は否定まではしていないです。少なくとも今の精神医療の現状を見ると、このプログラムの中には入院者を、身体拘束ではなく、沈静化するような発想も入っています。現状は、そういう発想すらなくて、とにかく、まず身体拘束ということが行われており、日本には多々あるわけです。だとすれば、最善でないかもしれないけども、このプログラムを学ぶことによって、身体拘束をしないという発想自体を学ぶということは、むしろプラスなので、これは完全ではないですけども、これを学びつつ、さらにいい内容に変えていく必要があると思うのです。

~精神科医療安全士の問題~
ただ、日本精神科病院協会では、「精神科医療安全士」という資格を創設したいという動きがあります。
病院協会が考えている安全士は、入院者は暴力を振るうことを大前提のようにして作られています。これは誤った偏見や差別意識を生むもので、問題です。
1日の養成プログラムの中で、このCVPPPについて、レッスンを受けることになっていました。CVPPPは体系立てて考えられていて、5日間の研修を受けなければトレーナーになれないです。それを、この新たな資格では、大切なところを外して研修され、それで精神科医療安全士なんてものが広まれば、むしろ入院者が暴力を振るうから制圧しなきゃいけないというような発想自体が広まる可能性があり、とても危険だと思っています。

■質問4:医療者側の不安を変えることはできますか?


まきび病院は、もともと100%が任意入院でした。今は80%ですが、それでも全国から見たら、もう飛び抜けて任意入院が多いわけです。入院時点で、とにかくコミュニケーションを取るのです。例えば、入院するときにはものすごく丁寧に、病院内でいろいろな説明を行って本当に納得してからじゃないと、なかなか入院できない。とにかく本人が納得するというところをベースにやっているというところが大事だと思います。
このような病院の取組みをしっかりと発信し、実際の事例を共有することにより、医療者側の不安も解消されていくことになると思います。

さいごに

ジョン・スチュアート・ミルは、「人間が個人としてであれ、集団としてであれ、誰かの行動の自由に干渉するのが正当だといえるのは自衛を目的とする場合だけである」と言っています。これは、徹底的に、自由というものを突き詰めた考え方です。「自由」がベースであるべきです。
身体拘束をされる人数は減ったが、入院者のその他の行動や生活への制限が強くなるとか病棟規則が厳しくなるとか、そんなことはあり得ないです。身体拘束がどんどん減り、限りなくゼロに近づいていくということは、入院者がより自由になることにつながるはずです。
だから、まきび病院の場合は任意入院の方が非常に多いということと同時に、開放医療でやっているということです。しかし、開放医療を行ってきた病院があったが、精神科救急ができて、閉鎖病棟になっている。開放病棟だったところが、どんどん閉鎖化に向かっている。診療報酬という形で国が政策誘導的にやったことが原因です。結果として身体拘束も増えているという流れがあります。
今回、身体拘束に関するデータを調査して、関西では身体拘束率が低く、まきび病院や沖縄のオリブ山病院等身体拘束が少ないとか、やっていない病院というのは、共通の雰囲気とか匂いがあります。この雰囲気をどんどん発信していくことが重要ですが、これは東京ではなく、関西とか、他の地域から発信していくことが大切ではないかと考えています。本日、こうやって大阪の方々を中心に、こういう話ができたことは、大変光栄に感じています。

認定NPO法人大阪精神医療人権センター活動報告会(総会)・記念講演会
2019年5月18日(土)13時から16時35分まで
エルおおさか南館5階 南ホール
参加者約200名

※本講演会は日本財団助成事業の一環として開催しました。

長谷川利夫さんの著作


【内容紹介】
問題の実態、現場スタッフの意識調査や海外の動向、隔離・拘束を縮減した成功例等をわかりやすく伝える。


  • 長谷川 利夫 著
  • 定価:税込 2,860円(本体価格 2,600円)
  • 発刊年月 2013.04
  • ISBN 978-4-535-98385-4
  • 判型 A5判
  • ページ数 160ページ
  • 人権センターニュース147は、データのダウンロード販売でも読めます  オンラインショップ

    ▽権利擁護システム研究会の目指す方向性/権利擁護システム研究会コーディネーター 竹端 寛・兵庫県立大学
    ▽認定NPO法人大阪精神医療人権センター活動報告会(総会)・記念講演会「精神科病院における身体拘束を考える」/講師 長谷川利夫さん・杏林大学教授・精神科の身体拘束を考える会代表
    ▽アンケート結果 参加者の声
    ▽個別相談活動の紹介と実践/大阪精神医療人権センター 個別相談検討チーム 彼谷 哲志
    ▽面会活動に参加している方の声
    ▽退院した方の声~退院請求を利用して~
    ▽権利擁護システムの構築に向けた最近の活動と、これまでの経緯/大阪精神医療人権センター理事・弁護士 細井 大輔
    ▽障害者政策総合研究事業 分担研究「精神障害者の意思決定及び意思表明支援に関する研究」に当センター関係者が参加することの是非及び懸念事項/大阪精神医療人権センター理事・弁護士 里見和夫
    ▽療養環境サポーター活動報告/阪南病院
    ▽療養環境サポーター活動報告/大阪さやま病院
    ▽入院者の声

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    認知症と隔離・身体拘束│人権センターニュースバックナンバーより

    精神科病院の中で、手足や腰などを専用の道具で縛る「身体拘束」をされる人の数が増え続けている。毎年6月30日現在の全国の精神病床の状況を示す精神保健福祉資料によると、精神科で身体拘束を受けている患者は、2003年に5,109人だったものが、2013年には10,229人と実に2倍となっていることがわかった。

    日本の精神医療の現状と課題

    日本の精神科病院は、世界的にみても入院者数がきわめて多いといえます。
    半数近くが強制入院(医療保護入院や措置入院)であり、任意入院者も多くが閉鎖処遇を受け、長期入院を強いられています。

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    現在、当センターの活動には、当事者、家族、看護師、PSW、OT、医師、弁護士、教員、 学識経験者、マスコミ関係者等の様々な立場の方が、世代を超えて参加しています。当センターは精神科病院に入院中の方々への個別相談や精神科病院への訪問活動、精神医療及び精神保健福祉分野への政策提言活動等を行っています。

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