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精神科アドボケイトとして病院にいく理由│人権センターニュース157

2021.04.19 UP

精神科病院の中でものを「盗られること」

病院に入院中、自分の物が盗まれても誰も相談にはのって貰えなかった過去がぼくにもあります。

それは7年前のことです。
入院中、朝起きるといつも付けている腕時計がありませんでした。
時計がない閉鎖病棟だったので腕時計がないと不便で困ります。
また、その時計は気に入って買ったのでとても大切にしているものでした。

慌てて看護師さんや主治医に相談はしたものの、親身になっての対応はしてくれず、「分かりませんね」とだけ言われました。
自力で探そうとしましたが、見つかりませんでした。結局解決はせず、泣き寝入りでした。

また、他の入院者が3年も前に無くした自分の服をに着ていたこともありました。
職員に言っても対応してくれないことは予測できたので、その服を着ていた人と仲の良い入院者さんに伝えて返して貰えました。

大切なものを保管する場所としては、鍵付きのロッカーはとても小さくて、薬やタバコが入る程度でした。

こういった病院側の杜撰な管理は許しがたいものがあります。しかし入院者はあきらめるしかないのです。
とにかく訴えてもきいてくれない、その声を大切にしてくれないのです。

サバイバル生活だった

ぼくが過去に入院していた病院は本当に昼寝も出来ないぐらいのサバイバル生活でした。
テレホンカードとタバコを交換。朝に出た食事のヨーグルト等とタバコを交換。
そうです言わば闇市です。

また、ぼくが付けていたネックレスに対して、
同じ病院に入院している人から「おい、そのネックレス1万円でどうや?」と言われ、誰にも相談できないし、お金も必要なのでその誘惑に負けたこともあります。
入院者同士の闇市は凄まじかったです。

入院者側が全て悪い訳では無いと今になって分かります。
病棟では外出や買い物が自由にできないことからか、物がタバコになったり必要なテレホンカードになったりが習慣化していました。

病院はそういう事が起こらないように、安心して療養できる環境にすべきです。でも、そういったことを許さない、社会のモラルと照らし合わせた病院が少なすぎるのでは?と今になって思います。

嫌なほど見た身体拘束

嫌なほど見ました。
トイレはおむつでします。食事の際は看護師に罵声を浴びせられながらスプーンでご飯を詰め込まれたり
確かにその方は調子が悪くて暴力をおさえられないことから身体拘束になっていましたが

落ち着いてきたにも関わらず、身体拘束が続けられていたのを覚えています。
その方は喉が乾いていたのか大きい声で「看護師さーん!」と何度も叫んでいました。
部屋の前を通るたび
「〇〇くん、看護師さん呼んで欲しい」と言います。
ぼくは看護師さんに伝えると
「ああ、あの人は無視してていいよ」
と言われたのを覚えています。

ぼくは「ちゃんと伝えたのに、間違えたことをしたのかなぁ?」と思いました。
看護師や医師など病院職員の人もそういったやりとりで感覚が麻痺していくのかもしれません。

今になって思うこと

今になって考えた時、これらは人権の侵害でした。
入院中の人のことを「人間だと思っていない」「一人の人として大切にしていない」これに尽きると思います。
閉鎖的、密室性の高い空間で、社会の感覚から掛け離れていくのです。

社会性が備わった病院、社会の目がはいる病院であればこの様な事態は回避されるはずです。
しかしながら残念なことに、多くの精神科病院は入院中の方に対しての社会性が欠如されていると思います。

病状がしんどくて入院しているのに、多くの精神科病院では相談できる環境が少ないのが事実です。
これでは入院している意味がありません。

病院の体制を変えていくことも必要ですが
周りや外に「相談できる環境を整える」、これが重要だと思います。

「安心して入院できる環境」
「社会性をもつこと」
この2点は、精神科病院の課題なのではないかと思います。

だから、今、自分がしていること

だからぼくは今、大阪精神医療人権センターの面会活動に参加しています。面会でお会いした時には、相手の方を一人の人として大切に思って、入院中の方のその声にしっかり向き合ってお話をおききしています。

川口知大(大阪精神医療人権センター 面会ボランティア/精神科アドボケイト)

※本インタビューはSOMPO福祉財団のNPO基盤強化助成で実施しました。

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